記事の信頼性
この記事は2020年11月25日に公表された株式会社divの官報を一次資料とし、現役の経理・財務マネジャーである筆者がレビューした結果を記載しました。
想定読者
この記事は以下の読者を想定して記載しています。
- 株式会社divが赤字ってホント?
- 株式会社divってつぶれるの?
- これからTECH CAMPを受講したら、会社が潰れて支払ったお金が無駄にならないの?
こういった疑問に答えます。
令和元年(2019年)12月31日時点の貸借対照表が意味することとは?
この記事では、貸借対照表(B/S)を中心に話を進めていきます。
早速、2020年11月25日に公表された株式会社divの決算公告をみていきましょう。
※今回はB/Sにスポットを当てた記事を書いていきます。
「P/Lはどうなっているの?」と思う方は、当ブログ内の以下の記事を参照下さい。
資産合計および負債・純資産合計について
まずはB/Sの大枠を見てみましょう。
資産合計および負債・純資産合計が
21.6億円
であることがわかります。
これは、第8期を迎える企業としては小さくない金額です。
なお、B/Sを膨らませるためには現預金の増加が欠かせません。
貸方は現預金が増加しない限り増加することがないためです。
こういった意味では、たった8期で21.6億円を資産計上している、という事実は、
- 融資元である銀行に信頼されていること
- 投資元であるVCが成長を期待していること
この2点を端的に表す証拠となっています。
B/Sの中身をひとつずつ分解
ここからはB/Sの中身を推計していきます。
まず、一致している確率が高い科目から見ていきます。
「株主資本」373Mの相手科目は「流動資産」(「現預金」)で間違いないでしょう。
また「固定負債」598Mは、株式会社divの業態からすると「長期借入金」で間違いないでしょう。
となると、相手科目はこちらも「流動資産」(「現預金」)で間違いないでしょう。
「固定資産」736Mの中身は以下の記事で記載した通りプログラミング教室の敷金および改修工事と推計します。
また家賃は基本的に前払です。このため1か月分の家賃が前払費用として計上されているはすです。金額は30M程度となると推計します。
まずはここまでを整理します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
現預金 | 373 | 株主資本 | 373 |
現預金 | 598 | 固定負債 | 598 |
前払費用 | 30 | ||
固定資産 | 736 |
ここまでの内容をまとめると以下の通りです。
- 現預金:971M
- 前払費用:30M(本社および教室の家賃の前払い)
- 他流動資産:431M(内容不明)
- 固定資産:736M(教室の敷金および教室の改修工事代)
- 流動負債:1195M(内容不明)
- 固定負債:598M(長期借入金)
- 株主資本:373M(出資された金額ー利益剰余金のマイナス)
この時点で現預金が
約10億円
と推計されるため、会社の健全性はかなり高いと思われます。
次に内容が不明となっている「流動資産」と「流動負債」を見ていきましょう。
流動資産と流動負債
官報によると、「流動資産」が14億円、「流動負債」が12億円あります。
「流動資産」とは現預金もしくは1年以内に現預金化されるものが中心です。
株式会社divの事業内容を考慮すると内容は現預金、売掛金、前払費用等が該当すると思われます。
「流動負債」とは1年以内に現預金が出ていくものが中心です。
株式会社divの事業内容を考慮すると内容は短期借入金、前受金、買掛金、未払金等があります。
流動資産14億円の内容を推計
次に流動資産14億円の内容を推計していきます。
まず、上記の推計でこのうち10億円は現預金としました。
では残り4億円の内容は何でしょうか。
4億円のうち、
売掛金が2億円
と推計します。
この数値は、こちらの記事で推計した売上高22億円を12で割った数値です。
※補足:売掛金の推計根拠
22億円の売上高が毎月経常的に生じると仮定すると1か月あたりの売上高は2億円、売上の回収サイト(入金までのタイムラグ)が1か月と仮定し推計しています。
例えば、東進ハイスクールの運営している株式会社ナガセは、2020年3月期の年間売上高(営業収益)が451億円となっています。
一方、売掛金は26億円となっています。
年間売上高451億円÷12か月=37.5億円となり、実際の数値26億円と近しい数値となりました。
よって、株式会社divの売掛金の推計値2億円も近しい数値となっているものと思われます。
流動資産の推計値まとめ
以上より、流動資産14億円の内容は、
- 現預金:10億円
- 売掛金:2億円
- その他:2億円
と推計します。
流動負債12億円の内容を推計
今度は流動負債12億円の内容を推計します。
流動負債の内容は、この3科目に集約されるはずです。
- 前受金
- 短期借入金
- 買掛金および未払金
前受金
ここでも、株式会社ナガセの資料から前受金の比率を算定します。
株式会社ナガセの2020年3月期の売上高は451億円となっています。
これに対して、前受金の金額は以下の通り49億円です。
このように、売上高の約10%が前受金となっています。
株式会社divの売上高と前受金の比率が同様と仮定し、前受金が
2億円
と推計します。
短期借入金
短期借入金は長期借入金の額から推計します。
長期借入金の平均残存返済期間を4年と仮定すると、長期(1年超)分の残存返済期間は3年となります。
3年の返済額が約6億円となっているため、短期分(1年内)分は2億円と推計されます。
これより、短期借入金の額は
2億円
と推計します。
買掛金および未払金
買掛金および未払金は、発生する費用から推計します。
費用がすべて掛取引と仮定すると最後の1か月分の費用が買掛金および未払金として計上されます。
2019年12月の費用推計値は20.6億円です。
よって、買掛金および未払金の推計値は
20.6億円÷12か月=
1.7億円
となります。
流動負債のまとめ
ここまでの流動負債の推計をまとめると以下の通りとなります。
- 前受金・・・2億円
- 短期借入金・2億円
- 買掛金等・・1.7億円
- 不明・・・・6億円
この不明6億円の中身が推計できませんでした。
ただ、前受金、短期借入金、買掛金等はいずれもそれぞれが2億円程度の差異が出てもおかしくはない推計になっているかと思います。
株式会社divの2019年12月期のB/S推計値まとめ
以上をまとめると、株式会社divの2019年12月期のB/S推計値は以下の通りです。
借方流固 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方流固 | 貸方科目 | 貸方金額 |
流動資産 | 現預金 | 10 | 流動負債 | 前受金 | 2 |
売掛金 | 2 | 短期借入金 | 2 | ||
他流動資産 | 2 | 買掛金 | 2 | ||
他流動負債 | 6 | ||||
固定資産 | 固定資産 | 7 | 固定負債 | 長期借入金 | 6 |
純資産 | 株主資本 | 4 | |||
資産合計 | 21 | 負債・純資産合計 | 21 |
2019年12月期のB/Sの状況
上記のように、株式会社divの2019年12月期のB/Sでは、現預金が10億円程度確保できているものと思われます。
仮に最も保守的なシナリオで「他流動負債」6億円がすべて短期借入金であったとしても、現預金10億円にたいして短期借入金8億円と十分に返済ができる状況となっています。
やはり、
2019年12月期のB/Sは健全
であると予想されます。
よって、
- すでにTECH CAMP等を受講されている方
- これからTECH CAMP等、株式会社divのサービスの利用を考えている方
以上のような読者の方は、安心して引き続き受講、もしくは新たに受講していただいて問題ないといえると考えます。
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